夏っぽい物語を作りたいおはなし
- By: Sirogane_sho(管理人)
- カテゴリー: 日記
目次
まえがき:夏ですね
今朝、妹の送迎で山道を車で走りながらAMラジオを聴いていまして、そこで宮沢賢治の物語の音読放送が行われていました。一応創作やってる者の端くれとして何か得られるものがあるかとそれを聴きながらハンドルを握っていたのですが、彼の作品は日本語がとても綺麗なんですよね。朝の陽光と木々の緑色が音読している女性の声と溶け込むようでえもいわれぬ時間を過ごしておりました。
それはそうと、夏です。
何か不思議な出来事が起こるのだとしたら、それは夏だと相場が決まっています。
森の奥で姉妹が大きなおなかの生き物と出会うのも夏です。町中にペンギンが溢れかえって少年とお姉さんが謎解きするのも夏です。水の都で水上レースに参加するのも夏ですし、田舎のお姉さんの家に少年が預けられるのも夏です。日常からかけ離れた出来事が起こるのはいつも夏のことなのです。
素人ですが、作家としてこの季節を逃すわけにはいきません。
何か「夏っぽい話」を書きたい……ここ数日はずっとそう思っていました。
ただ、何を書けばいいかは結局分からずじまい。そこで、自分の頭を整理するうえでもここで「夏っぽさ」を少しだけ文章化しようと思います。勿論私のことですので物語に「不思議なお姉さん」は出てきます。彼女のことについても触れながら、私だけの夏を少しだけ皆さんと共有していきますよ。
舞台背景を決めたい
先程ちょっとだけ触れましたが、夏を舞台とした話に「水の都」が登場する超有名作品があります。イタリアのヴェネツィアをモチーフとした街が舞台となる映画なのですが、その話はとにかく「水」の描写がきれいなんですね。これは非常に重要なことなんですが、「夏」と「水」は相性が最高なんですよ。どれくらい相性がいいかってピザとコーラ、映画とポップコーンがそうであるのと同じくらいです。
だから「水」を描きたい。
とりあえずは要素が一つ決まりました。
しかし、それだけでは物語の輪郭が浮き上がってきません。もっと夏っぽいものを探してみましょう。私が夏と聞いて思い浮かぶ風景があるのですが、それを少しだけ皆さんと共有します。
- 青空
- 入道雲
- 緑色の山
- 謎の小さな神社
……はい、十分に田舎な風景ですね。というのも私が住んでいるところはそういうところなのです。かといって何か物語で描かれるようなことは起こらないのですが、長年住んでいると「夏」のイメージもこのように固まっていくのですね。
私にとってこの中で印象的なのは山でした。しかも普通の山ではありません。「緑」の山です。これは先ほど挙げた「水」とも相性が良く、ここから木陰の河原、森の中の湖、と様々なシーンへ繋げることができます。緑となるのは山以外にもあるため、ここで抜き出すのは「緑」という色だけにしておきましょう。
さて、ここまでは自然に存在するものを探していましたが、そろそろこの辺りで人工的なものを想像してみましょう。目を閉じて自分の中の「夏」の世界に潜り込んだ私はそこで、山の中にぽつりと立つ自動販売機と壊れかけの木造の廃屋が見えました。あっ、ベンチと屋根だけのバス停も見えてきましたね。
これらの中から要素を抽出すると「廃れかけている」ということが分かります。少なくとも栄えている街ではありませんね。最初から田舎の場所か、昔は栄えていたけど今は限界集落になっているか、といったところでしょう。諸行無常。
イメージ的には、自分と相手しかいない状況、といったところ。理想的なことを言えば「同じ世界にいるはずなのに邪魔な人たちがいない」って状況ですね。こんな感じの言葉がないか探してみたんですがこれがなかなか見つからない。そこには人がいたはずなのに人の姿が全くない……うーん。
そう悩んでいる私はVtuberの動画を見ていたわけですが、そこでこんなゲームに出会いました。
ゲーム名は「NOSTALGIC TRAIN」。日本のある田舎町を舞台にした探索型ゲームなのですが、これとちょうど雰囲気が似てるわけです。そこに人がいたはずなのに自分しかいない、という感じに。
この物語では主人公は「神隠し」に遭ったとされています。それのせいで同じ空間にいるはずなのに位相がずれてしまい、他の人と出会えないまま街をさまようことになる……そんなことがゲームの序盤辺りで語られるわけですね。それを聞いた私は何となく自分の思い浮かべている「夏」の情景と重ね合わせ、この「神隠し」というものがぴたりと合っているのではと思いました。
私の夏には学校の友達はいません。目を閉じたそこにいるのは自分を気にかけてくれる優しい女性。出会ったことはないはずなのにすぐに親しくなって心の内を話せてしまう素敵な人。もしかしたら彼女は人間と呼ぶべきではないのかもしれない。人間を超えた、神様に近いような存在――
うん、まとまりかけてきたけど、少し落ち着こう。
さて、この辺りでキーワードが揃ってきました。
抽出した要素は「夏」「水」「緑」「神隠し」の4つです。
舞台は田舎のどこかでしょう。都会のコンクリートジャングルではありません。
そして、そこは程よく人の手が入っている必要があります。廃墟というには早すぎるけれど、かといって人の出会いはあまりないような街。昔は栄えていたけど今はもう廃れる一方、といった感じに。
自然――山と川の近くにある、集落というハコの中での物語。そこに他の人はいません。何かの事情で、主人公とヒロイン以外は消えてしまった。それはおそらく「山間部の田舎の町を模した二人だけの場所」という言葉で表現できるでしょう。そこが別次元なのかどうかは分かりませんが、我々がそれを説明できるだけの地点にたどり着いていないのは明らかですし、物語が完結した後もおそらく語られないでしょう。
ヒロインを決めたい
先程ちょっとだけ漏らしましたが、おそらくこの物語に登場するヒロイン――主人公の少年に優しく微笑みかけてくれるお姉さんは、人間ではない可能性が高いです。主人公と同じ境遇になっている理由作りでも、そのような環境でもずっと一緒にいられることも考えると人間を超えた何かであると考えた方がしっくりきます。
私の中だと、主人公の少年はおよそ12歳くらい。
それを考えた場合、お姉さんの見た目は20歳くらいでしょう。
彼女のことをことを頭の中で考えると「白い服」を身に纏っているのが見えます。それはワンピースかな? 断言はできないけれど、身体のラインがあまり出ないようなふわりとした服を纏っていますね。彼女の優しさがそこから感じられるようです。
世界観設定で「水」というものがありました。「山」「神隠し」とも合わせて考えると、彼女は「女神様の一人」として捉える方がしっくりくるかもしれません。「女神」と「水」は相性のいい言葉です。
ということで、早計にも思えますがヒロインは「水の女神」になりました。場所的には夏の山の中にある小さな祠に住んでいるのがいいでしょう。女神様だったら綺麗なのも当然だよなぁ!
ストーリーを決めたい
ここまでで決まったことをまとめると……
- 山際の寂れた町が舞台
- 主人公は12歳の少年(小学6年生)
- ヒロインは「水の祠」に住む女神様
- 主人公はある理由で「神隠し」に遭ってしまい、違う位相に迷い込む
手癖で書けば「不思議な出来事に巻き込まれた少年がお姉さんと出会って大人になっていく物語」になるんですが、せっかくここまで考えているのでその背景についても考えてみましょう。物語でも重要なのですが、どうして主人公だけが彼女の世界にさらわれてしまったのか? この辺をしっかり固めておくことでお姉さんと仲睦まじくするシーンの尊さが増します。
それは女神さまですら予想できなかった「異変」によるものなのか、女神様の個人的な想いによる「悪戯」なのか、それとも主人公の潜在的願いが「成就」されたのか? この辺は物語のエンドから逆算して考えていきましょう。どのような終わり方をするかで物語の根幹となる「神隠し」の性格も変わってくるからです。
キーとなるのは、物語の最終盤で主人公が現世へ帰った後、二人が再会できるかです。これの可否は誰が神隠しを起こしたかによって変わります。もしこれがハッピーエンドだとするならば、神隠しの原因は女神様の個人的な想いによるものとした方がよいでしょう。逆にビターエンドにするならば登場人物の感情が一切干渉しない「異変」によるものとし、また、主人公の成長で絶対的に別れが避けられない「成就」ルートをとることもできます。
私の創作観ですが、夏の物語は終わった後に爽やかな気持ちになるものです。
ですのでここはビターエンドに見せたハッピーエンド……つまり、「悪戯」と「異変」をうまい塩梅で組み合わせた感じになります。エンディングのシーンから想像するならば「女神様と別れて現世に戻った主人公が喪失感に苛まれているところへ白いワンピースを纏ったお姉さんが声をかける」といったところでしょう。ああ、これはいい。
蝉の声が聞こえる。
遠くから軽トラの走る音を聞いて、自分が帰ってきたことを知る。
でも隣に大好きだった人はいない――
物悲しさに包まれているところへやってくるお姉さんはちょっとだけ恥ずかしそうにしている。だって別れる時あんなに感動的だったのに。そうこうしているうちに二人の視線が合って、ちょっと変な声で笑った後、二人でぎゅっと抱き合いながら再会を喜ぶ。うん、これだ、これにしよう!
ということでハッピーエンドが決まったところで物語を逆算すると、主人公がお姉さんと出会い、仲良くなり、別れることを知り、心を決めて別れを告げ、また再会する、となりました。この中で少年には一回りも二回りも成長してもらいましょう。もちろん女神様にも少年を大人にさせてもらいます。おねショタはいいぞ。
あとがき
小学生の頃、私はずっと「ぼくのなつやすみ2」を家でやっているような夏を繰り返していました。私の住んでいたところは十分に田舎なのですが田舎過ぎるがゆえに物語的なことは何もなく、遠くから聞こえる蝉の鳴き声と風鈴の音を聞きながらゲームしていたわけですね。
その辺りからずっと「優しいお姉さんと仲良くなれないかなぁ」という想いは漠然とあったため、それが長い間心の中で温まった結果こんな感じの夏の風景が刻まれているのでしょう。だからこの時期になると私は心の中がざわざわしだします。
今回の記事は妄想にずっと付き合ってもらうような感じでしたが、普段私が物語を書くときはこんな感じのことを考えて書いているのだと知っていただければ幸いです。最近は遊戯王の記事を連投しているけれど、たまにはこういった日常のことを記すのも悪くはないでしょう。
もし物語が書き終わったら、また記事にすると思います。
どうなるかはわかりませんが。お付き合いいただきありがとうございました。
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