【遊戯王】アドバンテージのお話 ~デュエルを優位に進めるための基本の「き」~

デッキ構築&プレイングサポート

はじめに:塵も積もれば爆アドになる

カードゲームの世界ではよく「アドバンテージ」という概念が登場します。簡単に説明すると「そのカードの動きによって手札・盤面のカード枚数が前よりどれだけ増えたか」という意味で、強いとされるカードは効果を使用する前よりも多くのカードを盤面に揃えられる可能性を持っています。いわば、少ない枚数で強力な盤面を築くことが出来る、ということです。

ご存じの通り、遊戯王は最初、5枚の手札から始まります。
これは全てのプレイヤーに共通していることです。始めたばかりの初心者でも、仲間内でのカジュアル勢でも、大会勢も変わりません。誰もが全員手札5枚という同じスタート地点からゲームを始めます。そして、カードゲームには強いデッキ、すなわち「環境」と呼ばれるデッキが存在することも知っての通りでしょう。これは客観的事実です。

同じ枚数の初期手札からどれだけ強い盤面を作れるか、それが強いデッキとそうでないデッキの差となります。そしてそれは得られるアドバンテージの差でもあるのです。仮にこちらがある程度のアドバンテージを得られるカードを用いたとしても、相手がそれよりも更にアドバンテージを稼げる動きをしたら劣勢になってしまうわけで、もし勝敗を意識するのであればアドバンテージという概念から逃げることはできません。

とはいえ、いきなりそれを意識してプレイしろ、というのも酷な話。
大会勢ならまだしも、そうでない方の中にはもしかしたら「アドバンテージってなんかガチっぽくて嫌だ……」とよく思わない人もいるかもしれません。しかし、自分の好きなカード・デッキで勝つことを目指す人であればこれは猶更知る必要があります。

この記事では、遊戯王のみならずカードゲーマーなら必ず覚えておきたい「アドバンテージ」の話をします。しっかり読んで目指せ爆アド! 掴みとれ勝利!


アドバンテージの種類

カードゲームによってどのようなアドバンテージが存在するかは異なりますが、遊戯王において存在する「アドバンテージ」には大きく分けて以下のようなものが存在します。

  • 手札アドバンテージ
  • 盤面アドバンテージ
  • 墓地アドバンテージ
  • 除外アドバンテージ ※利用するのはごく一部のデッキのみ
  • テンポ・アドバンテージ

基本的にゲームで重視されるのは上の二つですが、デッキによっては墓地アド、そして除外アドを強く意識する場合もあります。最終的にデュエルの勝敗を分けるのは盤面アドですが、両者ともに押し合っている場合は手札・墓地アドも重要になるわけです。

どれが最も重要かは使うデッキや状況によって変わってきますが、一つ一つ解説していきましょう。そしてそれらのアドバンテージを得る上で代表的なカードも紹介していきます。


アドバンテージの解説

■手札アドバンテージ

《強欲な壺》

(禁止カード) 【通常魔法】

自分のデッキからカードを2枚ドローする。

カードを操るうえで最も重視しなければならないのがこの手札アドバンテージ、略して手札アドです。これが大切になってくるのはデュエル序盤の何もない時や、《ブラック・ホール》等の全体除去で互いのフィールドが更地になった場合となります。「手札の数だけ決闘者には可能性がある」という遊戯の台詞は有名ですね。

考え方は簡単です。手札のカードを1枚使い、その結果手札枚数が1枚増えていれば1アドとなります。
簡単な例だと上の《強欲な壺》が挙げられますね。《強欲な壺》1枚で2枚ドローすることが出来るため「-1+2=1」となって1枚分の手札アドが得られます。お手軽過ぎたせいか禁止カードになりました。

他の例も見てみましょう。デュエル中よく見るのはこちらです。

《増殖するG》

【 効果モンスター 】 
星 2 / 地 / 昆虫族 / 攻500 / 守200 

このカードを手札から墓地へ送って発動する事ができる。このターン、相手がモンスターの特殊召喚に成功する度に、自分はデッキからカードを1枚ドローする。この効果は相手ターンでも発動する事ができる。「増殖するG」は1ターンに1度しか発動できない。 

相手が発動した《死者蘇生》等の蘇生カードにチェーンしてこのカードを使用することで、相手がモンスターを蘇生させた時に1枚ドローすることが出来ます。これでアドバンテージ的には「-1+1=0」となり互角、トントンになりますね。そしてそこから更に相手がモンスターを特殊召喚すると、特殊召喚1回につき1枚ドロー。何か動くたびにこちらの手札アドが膨れ上がっていきます。

また、逆にこちらがカードの発動によって手札アドバンテージを失う場合もあります。通常、カードを発動する度に手札は減っていくものですが、俗に言う「手札交換カード」と呼ばれるものの中には結果的にディスアドバンテージ、ディスアドとなる場合があります。

《手札断殺》

【 速攻魔法 】 

お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。 

この《手札断殺》を発動した場合、最終的な手札枚数はカードを発動する前から1枚減ることとなります。墓地で発動する効果を持つカードを捨てることが出来る、という面もありますが、手札枚数のみに着目した場合、手札交換をする代わりに総数が1枚減る、というデメリットが浮かび上がってきます。

また、手札を捨ててドローするのは相手も同じです。そのため、こういった「手札交換カード」を採用する場合はこちらが手札アドを1枚分失うことを頭に入れておくことが求められます。


■盤面アドバンテージ

《ドラコネット》

【 効果モンスター 】 
星 3 / 闇 / サイバース族 / 攻1400 / 守1200 

①:このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札・デッキからレベル2以下の通常モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。 

盤面アド、とは文字通り盤面のカードの枚数を数えて計算します。自分フィールドのカードが1枚増えれば「+1」のアドになりますし、相手のカードによって自分フィールドのカードが破壊されれば盤面アドは「-1」となります。

上の《ドラコネット》を例にとって解説します。
《ドラコネット》は召喚成功時にデッキからレベル2以下の通常モンスターを守備表示で特殊召喚します。召喚時は手札アドが「-1」で盤面アドが「+1」ですが、モンスター効果で盤面アドがさらに「+1」されます。アドの総計は「-1+1+1=+1」。これより、《ドラコネット》は場に出すだけで「+1」のアドバンテージをもたらします。

また、盤面アドバンテージを計算するにあたり、EXデッキから特殊召喚されるモンスターは2~5枚分として数えることもあります。例を挙げるなら以下のカードです。

《ヴァレルロード・S・ドラゴン》

【 シンクロモンスター 】 
星 8 / 闇 / ドラゴン族 / 攻3000 / 守2500 

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがS召喚に成功した場合に発動できる。自分の墓地からリンクモンスター1体を選び、装備カード扱いとしてこのカードに装備し、そのリンクマーカーの数だけこのカードにヴァレルカウンターを置く。
②:このカードの攻撃力は、このカードの効果で装備したモンスターの攻撃力の半分アップする。
③:相手の効果が発動した時、このカードのヴァレルカウンターを1つ取り除いて発動できる。その発動を無効にする。 

汎用的な効果を持つこのカードですが、正規の方法でシンクロ召喚するならば多くの場合2体のモンスターから場に出されます。このことから、モンスター2体分の手間がかかっているためこのカードは最低でも「モンスター2体分」として計算することになります(厳密に言えば装備するリンクモンスター分も考えるため3~5体分にも膨れ上がりますね)。

そのため、これを《海亀壊獣ガメシエル》でリリースすることで莫大なアドバンテージが得られます。
手札アドは「-1」。相手の《ヴァレルロード・S・ドラゴン》を最大5枚分のカードとして計算した場合、ガメシエルが相手フィールドに特殊召喚されることから盤面アドは「-1+5=+4」。これを手札分と合わせると「-1+4=+3」となり、ガメシエルのリリースだけでかなりの盤面アドを稼ぐことが出来ていることが分かると思います。

自分のフィールドのモンスターを効果で増やしていくだけでなく、相手が苦労して出したモンスターを少ない枚数で処理することでもアドバンテージは得られるわけですね。


■墓地アドバンテージ

《おろかな埋葬》

(制限カード)【通常魔法】

①:デッキからモンスター1体を墓地へ送る。

墓地は第2の手札、と呼ばれることがあります。特に他のカードゲームと比べて遊戯王はこの傾向が強く、墓地で効果を発動するカードは数えきれないほど存在します。デッキによっては墓地のモンスターを特殊召喚したり墓地効果を発動するためにデッキからカードを墓地へ落としたりと、墓地を使った戦略は決してマイナーなものではなく、一言で表すならば「墓地アドは可能性のアド」と表現できるでしょう。

上の《おろかな埋葬》というカードは、書いてある通り、デッキからモンスターカードを1枚墓地へ送ります。使用した後は手札アドを1枚分失いますが、その分墓地アドを1枚分得ていることになるのでトントンです。墓地で効果を発動するカードは様々ありますが、最たるものはこちらとなるでしょう。

《馬頭鬼》

【効果モンスター】
星4/地属性/アンデット族/ATK1700/DEF 800

①:自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、自分の墓地のアンデット族モンスター1体を対象として発動できる。そのアンデット族モンスターを特殊召喚する。

アンデット族モンスターを多用するデッキでこのカードを見る機会は多いと思います。このカードの強みは墓地のアンデット族モンスターを何でも蘇生できることにあり、このカードが墓地にいるだけで墓地から何らかのアンデット族モンスターが出てくる「可能性」が生まれます。

例えば、手札5枚の初期状態で、先程紹介した《手札断殺》を発動した場合。その時にこの《馬頭鬼》とアンデット族モンスターカードを墓地へ送ったとします。《手札断殺》の効果処理が終わった段階では「-1-2+2=-1」となって手札は1枚分のディスアドになりますよね。

しかし墓地を見れば、そこには《馬頭鬼》とアンデット族モンスターが1体眠っています。《馬頭鬼》の効果でこのアンデット族モンスターを特殊召喚することが出来るため、最低でも墓地には1枚分のアドバンテージがあることになります。これにより、手札・墓地のアドバンテージを合わせて「-1+1=0」という結果になるわけです。

《死霊王 ドーハスーラ》

【 効果モンスター 】 
星 8 / 闇 / アンデット族 / 攻2800 / 守2000 

このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:「死霊王 ドーハスーラ」以外のアンデット族モンスターの効果が発動した時に発動できる。以下の効果から1つを選んで適用する。このターン、自分の「死霊王 ドーハスーラ」の効果で同じ効果を適用できない。
●その効果を無効にする。
●自分または相手の、フィールド・墓地のモンスター1体を選んで除外する。
②:フィールドゾーンに表側表示でカードが存在する場合、自分・相手のスタンバイフェイズに発動できる。このカードを墓地から守備表示で特殊召喚する。 

少しだけ話を変えてみましょう。
この《死霊王 ドーハスーラ》はフィールド魔法さえあれば容易に墓地から蘇ります。先程の《手札断殺》の事例で《馬頭鬼》と一緒に落とすことが出来れば、自身の効果で蘇生できる《死霊王 ドーハスーラ》と他のアンデット族モンスターを蘇生できる《馬頭鬼》という2つの可能性があることから2枚分の墓地アドになります。

そうなれば《手札断殺》を使った場合は手札アドが「-1-2+2=-1」、墓地アドが+2ということで「-1+2=1」と全体的に見て1枚分のアドバンテージを得られるわけです。


■除外アドバンテージ

《封印の黄金櫃》

(制限カード) 【 通常魔法 】 

自分のデッキからカードを1枚選択し、ゲームから除外する。発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える。 

多くの場合、カードが除外される、ということは再利用がとても難しくなることと同義になります。この為、《紅蓮魔獣 ダ・イーザ》等の特殊なモンスターを使用するデッキでもない限り自分から積極的にカードを除外する動きはあまり見られません。しかし【霊獣】の場合は話が別です。

少し複雑ですが、【霊獣】というデッキはフィールドの「霊獣使い」「精霊獣」モンスターを1体ずつ除外することで「融合無しの融合召喚」を行います。そして霊獣融合モンスターは自身の効果でEXデッキに戻ることで除外されている「霊獣使い」「精霊獣」を1体ずつ特殊召喚し、モンスターの起動効果を何度も発動させることでアドバンテージを得ていくわけです。

そして、メインデッキに入る霊獣モンスターはすべて1ターンに1度しか特殊召喚できません。これは名称指定であるため、除外されている「霊獣使い」「精霊獣」の種類を増やすこと、つまり墓地肥やしならぬ「除外肥やし」をすることがデッキの基本軸になってきます。これが除外アドバンテージの話になるわけですね。

とは言え、何も【霊獣】だけが除外アドバンテージを利用するわけではありません。先程ちょっとだけ名前を出した《紅蓮魔獣 ダ・イーザ》を用いるデッキであればダ・イーザの攻撃力を上げるために何枚もカードを除外しますし、《ミラクル・フュージョン》《平行世界融合》を併用する【融合HERO】でも除外アドは意識されます。


■テンポ・アドバンテージ

《増殖するG》

【 効果モンスター 】 
星 2 / 地 / 昆虫族 / 攻500 / 守200 

このカードを手札から墓地へ送って発動する事ができる。このターン、相手がモンスターの特殊召喚に成功する度に、自分はデッキからカードを1枚ドローする。この効果は相手ターンでも発動する事ができる。「増殖するG」は1ターンに1度しか発動できない。 

「テンポ・アドバンテージ」という言葉自体あまり馴染みが無いかもしれないので知らない人も多いでしょうが、これは目に見える物でないため実際の例を想像していただくしかありません。しかし勝負の世界に一度でも身を置いたことのある者であれば自然と分かることでしょう。

具体的には「相手のカードを腐らせる」ことでアドを得ることが出来ます。
その代表的なカードが上の《増殖するG》でしょう。

先述した通り《増殖するG》は発動したターン、相手がモンスターの特殊召喚に1回成功する度自分は1枚カードをドローすることが出来ます。これによって相手は特殊召喚1回と手札アド1枚分の損失を天秤にかけることとなり、少なくとも発動前と比べ相手の展開は明らかに鈍ることになります。

現代の遊戯王において、1ターンあまり動かず相手にターンを渡すことはかなりのリスク。テンポ・アドバンテージを得るということはその分相手よりも早く盤面を作ることができ、試合で先行することができるというわけですね。

また、相手の動きを鈍くさせるには「展開の起点を潰す」方法もあります。

《神の通告》

(準制限カード) 【 カウンター罠 】 

①:1500LPを払って以下の効果を発動できる。
●モンスターの効果が発動した時に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
●自分または相手がモンスターを特殊召喚する際に発動できる。
その特殊召喚を無効にし、そのモンスターを破壊する。 

デッキ・手札のカードを展開するには多くの場合呼び水となるカードが必要となります。《水晶機巧-ハリファイバー》や《ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム》といったモンスターの効果を不発にさせることであちらの思惑を大きく崩すことができ、向こうの考えていた盤面から遠ざけることができますね。

そして、こちらからの妨害で封殺するのは「相手が一番嫌がるカード」でなければいけません。その為には盤面のカードに注目するだけでなく、同じようなデッキを自分でも研究して動きを掴んでおく必要があります。例え自分がそのデッキをあまり使わないとしても、展開についての情報を知っているか知らないかで大きく差が開きます。

《増殖するG》についても言えることですが、テンポ・アドバンテージを得るには相手の操るデッキを知っていなければいけません。そこから「自分だったらどうするか」「相手は今どのような状況か」と推測する必要性が出てくるため、《灰流うらら》《幽鬼うさぎ》といった手札誘発カードを切るタイミングを見極めるには経験を必要とします。


おわりに:1枚1枚を大切に

遊戯王には、1枚のカードで何枚ものアドバンテージを得ることが出来る「パワーカード」という物があります。具体的に挙げると《隣の芝刈り》や《真炎の爆発》《ソウル・チャージ》《超再生能力》といったカードたちですが、これらを見慣れているとどうしても1枚1枚地道にアドバンテージを稼ぐカードが見劣りしてきてしまいます。

しかし、多くの場合、大会で上位に食い込んでいるデッキは1枚1枚から得られるアドバンテージを基に戦っています。勿論使っているカードの性能差はありますが、アドバンテージを得ること、失わせることを常に意識しているプレイヤーはどのようなデッキを握っても強い傾向にあるでしょう。

カードゲームにはどうしても「運」の要素が絡みます。
しかし強い人は安定してその強さを発揮します。デッキを組む段階から「運」に頼る部分を減らすことが出来るのは勿論ですが、試合中にうまく相手とアドバンテージ差をつけられる「実力」を持っているのも無視できない部分です。

もし、以前より使っているデッキがあるならば「アドバンテージ」をちょっとだけ意識して回してみてください。この動きでどれだけアドを稼げるか、この動きは逆に自分の首を締めてはいないか……そういった地道な研究が決闘者としての実力を高める近道になるでしょう。

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